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第2章
─3年前 元旦─
「叔父さん、お年玉なんだけどさ…もうちょっとくれたりしない?」
久しぶりに帰ってきた実家のリビングのソファで新聞を読んでいると、甥の咲楽が両手を合わせて頭を下げてきた。
「お前ね…安月給の俺からいくら奪う気だよ」
新聞を畳んでテーブルに放ると、すかさず俊介の隣に咲楽が腰かける。
「どうしても欲しいものがあるんだよ。じいちゃんとばあちゃんもお年玉くれたけどさ、あの二人からのお年玉は毎年母さんに取られちゃうんだよね。貯金しとくからって」
「そりゃそうだろうよ。あの二人、お前にいくらくれたんだ?2万か?3万か?」
俊介がテーブルの上のグラスを取って口をつけると、
「5万ずつくれた」
と、咲楽が平然とした顔で言うから、思わず口に入れたビールを吹き出しそうになった。
「はぁあ?ってことは…お前、10万ももらってんじゃん」
呆れてしまって少し声が大きくなったかもしれない。
しかし、俊介の両親は初詣に行っているから今は不在だ。
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