線香花火が消えるまで

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 瞬く閃光に照らされる足元。君は提灯のようにぶら下がり弾ける火玉を見つめている。僕は自分の持つ線香花火には目もくれず、火玉越しの君を見ていた。パチッパチと音が鳴る。火玉から飛び散る閃光は、不規則な姿をして儚げに光る。  その光は静寂を呼び起こす。すっと息をのみ珍しい真剣そうな眼差しを目に焼き付ける。次第に膨らむ火玉は刹那に切り離され姿を消した。まだ少し落ちない僕の線香花火を見て、君は先程の火玉のように頬を膨らませる。忽ちしとっと落ちる火玉を見ると、またイタズラな笑顔を僕に向けた。  儚く散った短命な夏の彼岸花は、また二人の間で静かに咲いた。
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