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僕の住処はエスクリビール通りにある。
この路地は書くこと、読むことに魅せられた路地だ。
僕を含め、書くことに憑りつかれた人々が気の向くまま、妄想の膨らむままに書き続ける。
他方、活字を両の目から食らう事に快楽を覚える愛読家達がまだ見ぬ一冊の世界を求めて路地を歩き回る。
路地の左右の家々の軒先には大小様々な本棚が連なりに連なり、双璧を成している。
この街には売買という行為が存在しない。
故に双璧に並ぶ無数の書物はその場で立ち読みをしても良いし、気に入れば持って帰っても良いし、読み終わればてきとうな所へ戻しても良い。
そんな規則とも言えないルールぐらいしか無い為、その作家の家の軒先だからと言って、その作家が書いた本ばかり並べられているとは限らない。
エスクリビール通りの本達は本棚から本棚へ旅をする。
出かける時にふと自宅の外に構えている本棚を見ると、見かけない顔がいるといったことは日常茶飯事だ。
気になって少しだけ目を通して出かけると、帰りには何処かに行ってしまうことも多々ある。
忘れた頃に何軒も先の家の本棚で何時の日かに読んだ本が見つかって、その場で読み耽ってしまうなんてこともよくある話だ。
僕の書いた雑誌たちや気まぐれで書いた小説たちもきっと誰かの手に渡り、何処かの本棚に座り、行き交う誰かに小さな世界を見せている。
それが僕のエネルギアであり、僕の存在する理由だ。
きっとエスクリビール通りに住まう作家皆がそう在ると僕は確信している。
おっと、受付が見えてきた。
僕の住む路地の事はまた話す機会もあるだろう。
一先ず、手続きを済ませるとしよう。
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