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パチパチパチパチ...。
2曲目が終わった。
僕の後ろの更に後ろに列が成されていた。
滴る汗はそのままにラナは顔を上げた。
瞬間、僕は彼女の瞳に気圧されそうになった。
クリクリとしたラナの丸っこい白緑の瞳は、長い前髪の奥でギラついていた。
「きょ、きょうはお集り頂き、ありがとうございましゅ、あっ、かんじゃった。ありがとうございます。」
ようやく挟まったライブMC、ラナは盛大に噛んだ。
つい今しがたのギラつきはどこへやら。
「「あはははははは!」」
ラナのズッコケたライブMCに会場がドッと湧いた。
「緊張すんなー。」
「リラックス、リラックス。」
「がんばれー!」
どこからともなくラナへと言葉たちが飛んでいく。
ソヌス通りの人々の耳は大いに肥えている。
しかし、音への敬意とも呼ぶべきその一挙手一投足は音を創り出さんとする1人の少女への応援へと形を変えた。
刹那、ラナの瞳が揺らいだように見えた。
「ありがとうございます!最後にわたしが作った曲を歌わせて下さい。」
「「おー!」」
瞬く間に大きくなった人だかり今日一番の歓声を上げる。
「Biography」
ラナは初めて己のウタを世に放ってみせた。
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