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「コンニチハ。ホンジツハドウイッタゴヨウケンデショウカ。」
受付のカウンター越しにプカプカと宙に浮かぶのは“ルア”、この街を象徴するシステムだ。
ルアの担う役割、それは継承である。
何処の誰が開発したものなのか、知らぬ間にこの街に広まり、皆の当たり前となった。
ルアは継承する、技術を、文化を、物を。
人が残したいと思うもの、残さなければならなものを後世に残す、ルアはそのシステムとも言える力で、この街から資本主義を消し去った。
これだけ大きな事が起きたというのに、その根本的な仕組みを知る者はいないというのだから、能天気なものである。
「入路申請をお願いします。」
「カシコマリマシタ。コチラ二ヒツヨウジコウヲゴキニュウクダサイ。」
ルアの案内に合わせて、僕の手元に操作画面が浮かび上がる。
住所、氏名、連絡先、行き先など、申請書類の欄を埋めていく。
ルアはこの街の至る所に存在する。
人手不足だった分野はルアによって補填され、失われかけた文化や伝統はルアのお陰で息を吹き返した。
あらゆる物事に要した人件費、それが一切かからないという状態が生まれた。
これが、この街の資本主義の崩壊の始まりだ。
人件費の消失にも等しいシステムの誕生は物価のバランスをいとも簡単に崩していった。
物価は急落、加えて単純な仕事からルアが人の代わりに行うようになっていった。
そこからは堰を切ったように次々と人が担っていた役割をルアが担うようになっていき、済し崩しに金を稼ぐという概念自体を街の住民は喪失した。
これが僕らの住むこの街の現在を形作るまでの過程、僕らの身近なご先祖様達が紡いできた歴史だ。
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