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「今更ですが、はじめまして。アシェリーといいます。」
僕はまた嘘をついた。
彼の写真の靄はより濃くなるに違いない。
特に握手などは求められなかったので、僕はそのまま続けた。
「先ほど、種々雑多、万物にと仰っていましたが、カルガモや喫茶店の看板でもいいのですか?」
「ええ。必ず何かしら写せます。例えばこれ。」
リオは僕にどこからともなく取り出した写真をまた手渡した。
写真にはポツポツと柔らかくて丸っこいピンク色の灯りが点在していた。
「この写真の心の持ち主は路地を歩いていたオレンジの首輪の飼い猫です。この子はきっと飼い主にかなり可愛がられています。日頃受け取った心も写真には反映されるんです。」
リオは左手で首にかけたカメラを撫ぜた。
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