中央庁より

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「ソレデハデレットヲオトオリクダサイ。」 入路申請からリーネアの発現までが他の路地へ赴く一通りの手続きだ。 僕はデレットに足を踏み入れる。 その瞬間、僕の踏み入れた左足は地面につくことなく、真下へ体ごと落ちた。 (今日は下か。) 真っ逆さまに頭から落ちながら僕は思う。 慌てる事はない、落ち着きたまえ。 何時ものことだ。 デレットを潜る時、前後左右に上下、ありとあらゆる方向へ引っ張られる。 他の路地へ行くだけなのに何故このような無駄なアトラクションが発生するのか、解せないが誰も分からない。 同じデレットを使っても引っ張られる方向はその日に寄って変わる。 入路者はただ引っ張られるままに行き先のデレットまで何もない真っ白な空間の中を流れていく。 この無用なアトラクションに酔う人もいると聞く。 君達は大丈夫か? 良かったらこの酔い止めを飲んでくれ。 直に行き先のデレットへ到着する、デレットを出る時の重力軸は自動調整されるから安心してくれ。 出口のデレットが見えてきた。 さぁ、これから混沌の一端に赴く訳だが、心の準備はできたか? ん?行き先? それは着いてからのお楽しみだ。 さぁ、行こう。
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