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「うちは貧乏だから」
母の口癖だった。
そんなものか。と幼心に思っていた。
食うに困るということは、あまりなかった、と思う。
ただただ、「うちは貧乏なんだ」と思いながら生活していた。
団地住まいだったし、シャワーは出ないから浴槽に水を張ってそれを温めて風呂に入っていたし、母の給料日前は貧相な食事にはなっていたけれど、あんまり気にせず生活していた。
借金が膨らんでることも知らずに、のほほんと生活していたのだ。
俺は、客観的に見てとてもいいこだったと思う。
物をねだることもなければ、わがままを言うこともない、良くも悪くも、大人びたこどもらしくない子どもだった。
それは、兄だからというのもあるかもしれないし、貧乏だからと言い聞かされて育ったからかもしれない。
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