偽りの歌     平正勝

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 すると、すぐにその効果は現れた。  こんこんと、控え目にドアをノックする音が聞こえてきた。 「どうぞう」  スミレが、あくびを我慢しているような、間延びした声で答える。  軋んだ音を立てて、ゆっくりとドアが開く。  その暗がりにひっそりと立っていたのは、私の妻と息子だった。
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