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「おやおやおや。通常ならば未知の存在にまずは驚くはずですが、挨拶を返されるとは思いもよらなかったですよ」
「はあーー」
挨拶されたから社会常識として返しただけなのだが、と男は目の前の未知の存在ーー死神と名乗る者の発言に疑問に思う。
「なるほど社会常識ですか。ますます不思議ですね、こんなサイコパスな連続殺人鬼に常識を説かれるとは」
「!?」
男は咄嗟に距離をとる。
さっきの考えは口に出していなかったはずだ。ならば心を読まれたと考えるのが妥当だろうと結論付けた。
「ええ、読んでますよ。あなたが今もなお私の命を狙っていることもね。もっとも先ほど申した通り、私死神なので死なないのですが」
「ーーーその死神が俺に何の用?」
待ち伏せていたという発言から察するに、誰かを待っていたのだろう。そしてその相手は連続殺人鬼だった。さらに最近世間をにぎわせている殺人鬼。これらの条件にあてはまるのは他の誰でもない、自分自身だ、という結論に男はいき着いた。
「ほう、冷静に自分自身を殺人鬼といいますか。自覚はあるんですねえ」
「まあ、そうだな」
最近見たテレビで、報道されていた人物の顔が最近見た死に顔と一緒で、そのテレビで特集として組まれていた”近年現れた殺人鬼ーその動機は一体”において登場していた顔も過去に見た死に顔と一緒だったから、という理由に過ぎないのだが、この考えも、目の前の死神に読まれているのだとしたら少しおかしく思えた。
「まああなたのことはよくご存じですよ。ちょうど2ヶ月前から活動を開始し、これまでに30人殺していますね。すごいですよ、2日に1回のペースですねえ。もっとも1日に2人か3人殺す日もあるのであまり参考にはなりませんが。あ、私を含めると31人ですかね?」
「へえ、案外少なかったのか」
「少ないとはご謙遜を。ただの人がこれほどまで短いスパンで大勢の人を殺す。これは珍しいですよ」
「はあ」
実際のところ、今まで殺してきた人物の数に男は興味がなかった。自分が求めていたのは死に顔のみ。それ以外はどうでもよかった。良い死に顔を見るための工夫や作り続けるための手口や手法、見つかりにくい時間帯・場所を調べること程度はしたが。その程度だった。
「それでさっきの質問に戻るんだが、死神が何の用?」
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