死神のお返死

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 男の目線の先には、青年らしき人物がたまに周囲を照らす街灯に背を預け、目を瞑っている。  誰かを待っているか、それとも夜遊びの帰りか。だが男にとってそんな事はどうでも良かった。  待ちに待った獲物だ。そう思った瞬間、それまでふらついていた体は前方に傾き、シマウマを追い詰めるチーターのごとく、俊敏で迷いのない動きで駆け抜けていく。  青年と男の距離はそう離れていなかった。加えて街灯もない道であるため気づかれにくく、さらに青年は眠っているのか近づく男の駆け足の音にすらピクリとも反応しなかった。  ラッキーだ、と内心男はほくそ笑んでいた。獲物を追い詰めるときの絶望した顔も至高であるが、それではどうしても死に顔は歪んでしまい美しくない。やはり苦痛に満ちたまま死を迎えるのではなく、綺麗な顔で死なせることこそ美学であると男は思っていた。  そういった意味でこの状況は最高だ。  これならば先ほどの女よりも良い死体が出来上がる、と男はいつの間にか出ていた笑みを深ませていく。  走り始めて僅か数秒で男は青年の前まで着き、駆け抜けた勢いそのままに青年の喉元にナイフを突き刺した。
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