第22話 まずはお茶を一杯召し上がってからです。

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 のんびりした声が部屋の奥で上がる。別方向の入り口から茶器一式を載せたワゴンを押して現れたのは、先ほど馬車を操っていた金髪垂れ目気味の青年だった。やむなしといった表情でアビゲイルが肩をすくめる。 「最後の客もちょうど来ました。──どうぞ、入って」  背後に向かって声を上げると、ひとりの青年がおずおずと現れた。 「エリック……!?」  兄ヒューバートのかつての従者エリックは、ソニアを見てホッと安堵の表情になった。 「お嬢様! よかった、ご無事で──」  ソニアは皆まで聞かず怒り任せに掴みかかった。 「あなたのせいね!? あなたのせいでお兄様は変になっちゃったんだわ……!」 「ち、違いますッ」 「はいはい、双方落ち着いてー」  べり、と音をたてる勢いで金髪青年がソニアとエリックを引き剥がす。後ろからギヴェオンがソニアの腕をそっと押さえた。 「あなたの警護をブラウニーズに依頼したのは、このエリックさんなんですよ」  弾かれたように振り向くと、ギヴェオンの蒼い瞳が眼鏡の奥で透徹と光っていた。 「……どういうこと」 「まずは落ち着いて、お茶を一杯召し上がってからです」
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