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「……彼はわたしの秘書で、ユージーン・リドル」
よろしくね~と笑み崩れる軟派な秘書をアビゲイルは鋭く睨み付けたが、ユージーンはうろたえもしない。
軽くこめかみを押さえ、アビゲイルは抑えた口調で話を続けた。
「うちは主に上流階級の方々のお屋敷に勤めるスタッフを派遣しています。皆、求められる職業能力が折り紙付きなのは当然として、うちにはその他にも高い能力を持った派遣員がおります。そこの──」
と壁際に立っているギヴェオンを指す。
「彼のように、一見凡庸そうに見えて緊急時には何かと役に立つ男とか」
「緊急時以外も役に立ちます」
ギヴェオンは眼鏡をきらりとさせて訂正した。アビゲイルは無表情に言い直した。
「……日常はもちろん、とりわけ緊急時に役立つスタッフです。ブラウニーズは色々と事情のある上流階級の方々に、家事能力はもちろん護衛としても有能な特別家事使用人をご要望に応じて派遣しております」
「それが裏家業なんですか」
「いいえ、本業です。要するにうちは『家事以外のことはできません』という人の登録は受け付けていないのです。家事能力に加えて特技のある人のみ採用しております」
窓辺でユージーンが付け加える。
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