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ナイジェルの凄絶な死を思い出し、ソニアの胸は鋭く痛んだ。
だが今は悲しみに浸っているわけにはいかない。ソニアは涙ぐみそうになるのをぐっと堪えた。
「……あなたの忠告を、お兄様は聞かなかったのね」
「は、はい……。何度申し上げても、おまえの誤解だ、曲解だとおっしゃるばかりで。ひどく不機嫌になって、今までにないほど激昂されてひどい言葉で罵られました。驚きましたが、それ以上に心配でたまらず……。こうなったら大旦那様にお出まし願うより他ないかと、手紙を書き出したところを旦那様に見つかって、その場でクビを申し渡されました。私を大旦那様のスパイだと決めつけてひどく罵倒されて。私もあまりにショックで、つい売り言葉に買い言葉、辞めますと叫んで飛び出してしまったのです……」
「あなたのせいじゃないわ」
「いいえ! 私のせいなんです。元はといえば、私があの胡散臭い男と近づきになってしまったのが悪い。私のせいなんです……!」
生真面目な従者が両手に顔を埋めるのを、なすすべもなくソニアは見つめた。やがてエリックは顔を上げ、小さく鼻を啜った。
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