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父が本から目を上げて微笑んだ。ソニアは兄を出迎えるべく急いで玄関へ向かった。階段を降りていくと、金褐色の髪の青年が従者に帽子を渡しているところだった。
「お兄様!」
「やぁ、ソニア。元気だったかい」
抱擁と挨拶のキスを交わし、ヒューバートは空色の瞳で軽快に笑った。
「よかった、間に合わないんじゃないかとやきもきしたわ」
「予想以上に道が混んでいてね。──ああ、父上。遅くなって申し訳ありません」
ゆったりと歩み寄った公爵は息子と握手しながら肩を叩いた。
「早く着替えてきなさい。ミセス・コーウェンが腕によりをかけた料理が冷めてしまう」
「ええ、すぐに」
従者を従えて自室へ向かうヒューバートを見送り、ソニアはふと首を傾げた。
「お兄様、従者を変えたのね。エリックじゃなかったわ。お父様、ご存じだった?」
「いや。何も聞いてはいないが」
父に促されて食堂へ向かいながら、ソニアは何となく腑に落ちなかった。
ディナージャケットに着替えたヒューバートを迎え、久々に親子三人揃っての食事が始まった。
兄からロイザでの学生生活を聞くことを、ソニアはとても楽しみにしていた。ロイザは帝国最古の大学が開かれた町で、学問と研究の中心地となっている。歴史ある建物や美しい運河が見事な町で、ソニアはまだ一度も行ったことがないのだ。
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