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エリックとよほどひどい口論にでもなったのだろうか。ソニアの印象では、エリックは心配性なところはあっても口うるさく指図するタイプではない。ましてやヒューバートの友人の悪口を言ったなんて、ちょっと信じられない。
自室に戻ってフィオナに訊いてみると、やはりソニアと同じ意見だった。
侍女のフィオナと従者のエリックは、同じく上級使用人である執事や家政婦と一緒に食卓を囲み、言葉を交わす機会が多かった。エリックは他人に指示を出すのが苦手で、執事には向いていないと苦笑まじりに言っていたことをフィオナは覚えていた。
「坊っちゃまもおとなになられたということなんでしょうね」
妙にしみじみとフィオナは嘆息した。ヒューバートは今年で二十歳になる。幼い頃からききわけのよい利発な子で、父に逆らったり言い返したりしたのを見たことがない。その点ソニアのほうがよほど言いたい放題で、わがままだった。
「遅まきながら反抗期、ということかしら」
「かもしれませんね。それにしてもオージアスさんは素敵な方ですわ」
頬を染めるフィオナを、ソニアはじろりと見た。
「フィオナって、本当に面食いよねぇ」
「そ、そんなことはありませんっ」
「あらそーお? アイザックのこともキラキラお目目で見てるじゃないの」
「違いますっ、わたしはただ見目麗しい殿方が、その、好ましいな~って思うだけで」
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