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「オージアスさん、ですか? さぁ~、ちらっとしか見てませんので、何とも……」
「階下で喋らなかったの?」
「私はあんまり。上級使用人のフレッチャーさんかフィオナさんに訊かれては」
フィオナは彼の良さげな面しか見ていないし、執事に問うのも大仰かと思ってギヴェオンに尋ねたのだが。
「あのー、他にご用がなければ行ってもいいでしょうか。まだ靴磨きが終わらなくて」
頷いて長椅子に沈み込んだソニアは、ふと気付いて伸び上がった。
「ちょっと待って! ギヴェオン、あなた靴磨きまでしてるの?」
「そりゃあしますよ。当然です」
「それはもっと下の者の仕事でしょ。あなたは私の従僕なのよ」
「だから磨いてるのはお嬢様のお靴だけです。御用事があればいつでもなんなりとどうぞ。あ、お出かけの際は必ず呼んでくださいね。旦那様からきつーく承っておりますので」
しかめっ面で頷き、行ってよしと手を振る。こめかみを押さえ、ソニアは溜息をついた。あのへらっとした態度に苛立つのか和むのか、よくわからなかった。
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