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ナイジェルの心配はソニアにもよくわかった。兄が単なる貴族の御曹司であれば、学生の悪ふざけとして眉をひそめられるくらいで済むだろう。しかし兄は準王族なのだ。お遊びでもそんな団体に所属しては、良識を疑われるだけでは済まない。父にとっても大きな痛手となりかねない事態だ。
「そのクラブにヒューが入ったきっかけがエリックにあるみたいなんだ。詳しいことはよくわからないが、エリックが酒場である男と知り合って意気投合し、その男をヒューに紹介した。エストウィック卿と言って、触れ込みではレヴェリアの貴族だそうだが、実のところは正体不明だ。そのエストウィック卿がくだんの〈世界の魂〉の現在の主催者で、ヒューを結社に引き入れた。いい噂を聞かないから早く抜けるように、僕も何度か言ったんだけど、エリックと一緒に嵌まっちゃったみたいで……。でもヒューはエリックと口論になってクビにしただろう? だからてっきり結社とは縁を切ったと思っていたのに」
悔しそうにナイジェルは顔をしかめた。
「〈世界の魂〉は学生クラブなんでしょ?」
「認められれば学生じゃなくても入れるんだよ。資金を提供するバックがついてるクラブは他にもたくさんある。エストウィック卿は某大学教授の家に客人として滞在していた」
「していた、ってことは今は違うのね」
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