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「居場所はわかってる。──ここだよ。この城をハル男爵から借りたのはエストウィック卿なんだ。今夜のパーティーの主催者は彼、エストウィック卿だ」
背筋がぞっと冷えた。何か途方もないことの渦中にいるのだとソニアはやっと気付いた。
「……あなたはどうしてここにいるの? まさかあなたも〈世界の魂〉のメンバー?」
「違うよ。僕は以前エストウィック卿とちょっとした意見の食い違いから議論になって、以来彼には嫌われてるんだ」
「なのに招待されたの?」
「招待状は買えるんだよ。このパーティーで主人が選んだ招待客なんかほんの一握りさ。後は金で招待状を買った一般客だ」
だからこんなに人が多いのか……。どうも盛況というより雑然としていると思ったら。アステルリーズには富裕な市民層も多いが、爵位を持たない一般人はどれほど裕福であろうと特別な縁故でもない限り貴族の社交界からは締め出されている。こういう古城など由緒ある建物はほとんどが貴族層の持ち物だから、城で開かれるパーティーに出席できるなら高額な招待状でも買いたがる人は多いだろう。
「資金集めってことなのね」
「そう。〈世界の魂〉のための──いや、それならまだいい。もしかすると、もっととんでもない組織のための資金集めかもしれない」
「とんでもない組織? 何なのそれは」
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