12人が本棚に入れています
本棚に追加
/162ページ
第11話 そういう問題ではありません!
今度こそ、ソニアは愕然とした。足元が急に崩れ落ちるような気がして、思わずよろけてしまう。ナイジェルが慌てて支えた。
「〈月光騎士団〉……? あの、貴族を襲撃している……?」
自分を刃物で襲った、花売り娘に扮した少年。いや、彼は〈月光騎士団〉をはっきり名乗ったわけではないが。それにしたって、まさか兄が過激結社のメンバーだなんて……。
「──ソニア!」
大声で名を呼ばれ、びくりと振り向く。人込みを掻き分けて兄が大股に歩み寄ってきた。ひどく顔がこわばり、血色が悪い。
「一緒に来てくれ、ソニア。紹介したい人がいる」
ヒューバートは早口に言ってソニアの手首を握った。急に引っぱられてよろけてしまう。ナイジェルはムッとした顔でヒューバートの肩を掴んだ。
「乱暴はよせよ、ヒュー」
「こいつは僕の妹だ」
いつになく荒々しい口調に目を瞠る。兄がこんな乱暴な喋り方をするのは初めて聞いた。
「そんなに急かさなくたっていいじゃないか。転んで捻挫でもしたらどうする」
自分を気遣う言葉にソニアは感動したが、ヒューバートは余計に苛立って眉を逆立てた。
最初のコメントを投稿しよう!