第11話 そういう問題ではありません!

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 ヒューバートは拳を振り上げ、ドアを叩いた。まず三回。間を置いて一回。素早く二回。そしてまた一回。  内側から鍵が外される音がして、両開きの扉が重々しくゆっくりと開かれる。引きずられるように室内へ入ると、背後で扉が固く閉ざされた。  照明が抑えられていて部屋の四隅は暗がりに沈んでいた。室内には一ダースほどの人間がいた。いずれも夜会服姿で、男性であることだけはわかっても誰が誰やら区別がつかない。というのも、全員が白い仮面ですっぽりと顔を覆っているのだ。  異様さに足を竦ませるソニアを引きずり、ヒューバートはまっすぐ部屋の奥へ進んだ。仮面の男たちは無言のままふたりを追って向きを変え、気がつくとソニアは仮面男の包囲網の中、ひとりだけ椅子に座った人物と対峙させられていた。  その男は金泥を塗った獅子脚の椅子にゆったりと腰を下ろし、周囲に雷状の飾りがぐるりとついた金色の仮面をつけていた。仮装パーティーでよく見かける太陽を擬人化した扮装で、その場合は裾をひきずるぶかぶかした白い衣装を着るのが普通だ。  しかし目の前の男は仮装しているわけではなく、他の男たちと同じ夜会服姿で、ボタンホールには白い薔薇を飾っている。何ともちぐはぐな格好が、いっそうこの場の異様さを際立たせていた。 「連れてきました」     
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