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「いやよ! まさかお兄様、わたしに爆発物でも置かせるつもりじゃないでしょうね!?」
兄の顔が固くこわばり、ソニアは一気に絶望に包まれた。
「……ただの花火さ」
「嘘! お兄様、本当に変な結社に入ってるのね!」
「ナイジェルが喋ったんだな。余計なことを……」
ヒューバートは不愉快そうに吐き捨てた。
「お兄様、こんなことは今すぐやめて!」
「僕たちはアスフォリア帝国を少しでもよくしたいと願ってるだけさ。この国を守るべき貴族は、長く続いた平和に浸かりきってすっかり緊張感をなくしてしまった。このままでは六王国のいずれかに取って代わられるのは時間の問題だ。いや、それ以外の新興国に攻め込まれて滅んでしまうかもしれない。実際、二十年前の北方戦争の時は危なかった」
「だからって暴力で叩き起こすわけ? まさかわたしが襲われることも、お兄様は知っていて黙ってたの!?」
「別にケガもしなかったし、すぐに助けが入っただろう」
「ギヴェオンが助けてくれなかったら死んでたわよ!」
憤激してソニアは叫んだ。兄はちょっと脅かすだけのつもりだったのかもしれないが、実際に襲ってきた女装の少年には完全に殺意があった。
間近で見た少年のあの眼。あれを見てしまったら、悪ふざけだなんてそんな言い訳は通じない。
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