第12話 気概を見せろと言われても!

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「それとこれとは話が別よ! お兄様の言ってることは滅茶苦茶だわ」 「──そうか、それじゃ仕方ない」  不意にヒューバートは平板な顔になった。背後に控える仮面の男たちに向かって頷くと、何人かが隣の部屋に続くドアを開け、中から誰かを引きずって戻ってきた。ソニアの顔が驚愕と絶望にゆがむ。 「フィオナ……!?」  後ろ手に縛られ、口に猿ぐつわをされたフィオナが激しく身をよじる。足首まで縄が巻かれ、身体の自由がまったくきかない。  涙のにじんだ瞳で、それでも気丈にフィオナはソニアを見つめて何度も首を振った。今までの会話を隣の部屋で聞いていたのだろうか。必死に目で訴えてくる。言うことを聞いてはいけない、と。兄がそっと肩に手を置いた。 「覚えてるかい、ソニア。ここの堀は河と繋がっているって教えたよな。どうしても僕の頼みを聞きたくないと言い張るなら、フィオナを堀に放り込まなきゃならなくなる。あんなに縛り上げられていては泳げないし、あっという間に河まで流されて死体も見つからないだろうね。そうなれば葬ってあげることもできない」 「どうしてそんなことが言えるの! フィオナとは小さい頃からの付き合いなのにっ」 「言っただろう、少しくらいの犠牲はやむを得ないと」  少しくらい。     
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