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「旦那様は──、亡くなられました。銃で撃たれて」
身体を支えていた腕ががくんと揺れた。バランスを崩したソニアを、御者台から飛び下りたギヴェオンが素早く支える。
ソニアは馬車の中で膝をつき、窓にすがりついた。
「誰がそんなことっ……」
「エリックさんです!」
ティムは引き攣った声で意外な人物の名を叫んだ。
「え……?」
「若様の従者だった、エリックさんですよ! 若様とお嬢様が出かけてまもなく、エリックさんが訪ねてきたんです。旦那様にお会いしたいと言って。嘘じゃないです。俺がフレッチャーさんに取り次いだんですから」
ティムは炎の熱で赤らんだ頬をさらに赤くして言い張る。声も出ないソニアに代わってギヴェオンが質した。
「旦那様は彼とお会いになったのか?」
「は、はい。フレッチャーさんが案内しました。俺は書斎に珈琲を持っていくよう言いつかって。お盆に珈琲セットを載せて書斎へ行って、ノックをしてドアを開けたら中からエリックさんがすごい勢いで走り出てきたんです。ぶつかって、高価なカップが全部割れちゃった……。ああ、どうしよう……!?」
ギヴェオンはすっかりうろたえておろおろするティムをなだめ、先を促した。
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