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第16話 残さず召し上がればお話しします。
暴風に巻き込まれたかのような一夜が明けた。
粗末な寝台の上に身を起こし、ソニアは黒ずんだ梁がむき出しになった斜めの天井をぼんやりと見上げた。
少しずつ昨日の出来事が思い出されてくる。あまりにも多くの事件が立て続けに起こり、昨夜は思考停止に陥ってしまった。
ここはギヴェオンの知人宅だそうだが、よくも眠れたものだと我ながら思う。
控えめなノックの音にぼんやりしたまま返事をすると、年若いメイドが洗面器と水差しを持って入ってきた。
軽く膝を折り、微笑みを浮かべる。片隅の鏡台に洗面器を置き、開けたままの戸口に戻って廊下から差し出された包みを受け取る。黒い上着の袖口が覗いた。
「……ギヴェオン?」
「はい」
落ち着いた声が戸口の向こうから返って来る。ソニアは急に胸が締めつけられるような感覚に襲われ、声を詰まらせた。
「お支度が整うまでお待ちします」
ソニアは唇をふるわせ、様子を窺っていた少女に小さく頷いた。扉が閉められる。ぐっと奥歯を噛みしめ、ソニアは寝台から起き上がった。
少女の手を借りて洗面や身支度を済ませて部屋を出ると、言葉どおり廊下でギヴェオンが待っていた。
「おはようございます、お嬢様」
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