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「さぁ、早く」
ギヴェオンに急かされ、ティムはおずおずとソニアの袖を引いた。
「お嬢様、行きましょう」
「まっすぐ行くと路地の出口に黒塗りの馬車が止まってます。手綱を取っているのは金髪の垂れ目男で、私の知り合いです。先に出発してください。後で追いつきますから」
ソニアはギヴェオンの背を茫然と眺めた。
(本当に関係ないの……?)
「早く!」
鋭い声音に、鞭で打たれたようにハッとする。ソニアはティムに手を引かれるまま、崩れた穴を潜って走り出した。
ギヴェオンは手にしていた少年のナイフを何気ない動作で放った。それは少年が折しも取り出したもう一本のナイフに当たって弾き飛ばした。
「危ないですよ。刃物なんてやたら振り回すもんじゃないと言ったでしょう」
にっこり笑う黒縁眼鏡の青年を、ジャムジェムは憎々しげに睨んだ。
「何なんだ、おまえ。こないだから邪魔ばかりしてくれて。ずいぶん手慣れてるみたいだけど、軍の関係者かよ?」
「ただの家事使用人です」
「ふざけんなっ」
にっこり笑うギヴェオンに、少年は激怒して飛びかかった。
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