第21話 眼鏡壊したら弁償してくださいね。

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 館の内部は趣味のよい調度品や絵画が適度に飾られ、斡旋所というより個人の邸宅のようだ。  靴音を吸収する深紅色の絨毯を踏んで奥へ導かれる途中、階段の側でギヴェオンは足を止めた。 「ティムは階下で休んでいなさい。ダフネ、お嬢様は私が案内するから、彼にお茶を」  ダフネは頷き、気安い調子でティムを手招いた。ふたりが連れ立って階段を降りるのを見送ってふたたび歩きだし、ギヴェオンはひときわ重厚な造りの扉をノックした。 「ソニア様をお連れしました」 「入りなさい」  クールな女性の声が重々しい口調で応じる。  中に入ると、正面にひとりの女性が立っていた。二十代の半ばくらいだろうか。亜麻色の髪を後ろでまとめ、かっちりした紺色のツーピースドレスが怜悧な美貌によく似合っている。ギヴェオンほどのっぽではないが、ソニアよりもずっと背が高い。  扉を閉めたギヴェオンがソニアの斜め後ろに落ち着くと、おもむろに歩み寄った女性はいきなり左足を振り上げた。ほとんど反動もつけず、右足を軸にして凄まじい勢いの蹴りを放ったのである。  ギヴェオンの側頭部で、ぴたりと足は止まった。ほとんど髪の毛一本の差で見事に停止している。チッ、と女性は舌打ちをした。 「何故避けん」 「避けたらソニア様に当たりますので」     
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