第0話 再生

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第0話 再生

 意識を取り戻した時、自分は死んだのだと思った。  嬉しかった。  ホッとしていた。  猛火で生身を炙られるかのような激痛も、窒息しそうな苦しさも、もうどこにも感じられない。 (ああ、やっと死ねた)  殺してくれと何度叫んだことだろう。  こんな苦しみを味わうくらいなら、いっそ死んで楽になりたい。  わめく自分を家人はただおろおろと見守るばかりで、そのうちに痛みのあまりわけがわからなくなった。  きっとそんな自分を見かね、誰かが手を下してくれたのだ。  ゆったりと呼吸をし、空気の成分のひとつひとつを味わった。  今までとは異なる味わいだった。複雑であるにも関わらず、すべての構成要素がわかる。  ふと、違和感を覚えた。  自分は死んだのに、どうして空気を味わったりしているのだろう。死んだら息をしないのではないか?  指先がざらりとした布地を掴んだ。  ざらり。  どうしてそれがわかるのか。死んだら何も感じないはずだ。  目を見開いた。  歳月を経て黒ずんだ、見慣れた板張りの天井。  死んだのに、どうしてそれが見える?  窓の外からは甲高い鳥の鳴き声が聞こえた。  馬鹿な。聞こえるはずがない。  何だ、これ。     
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