第2話 信者なら〈光の書〉を暗記するくらい当然です。(2)

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第2話 信者なら〈光の書〉を暗記するくらい当然です。(2)

「褒めてません」  睨まれたソニアは亀のように首をすくめた。 「では、〈光の書〉、通史の部分を暗唱しなさい。今私が読んだ続きから」  アイザックはくるりと背を向けてしまう。続きと言われても完全に寝落ちていたので見当もつかない。  横目で窺うと、フィオナが口をぱくぱくさせて教えてくれた。ソニアは軽く息を吸い、暗唱を始めた。 「……そして神々は必要なものを創り始めた。 まず、世界を司る四つの元素に〈宇宙の息吹(アントロポス)〉を吹き込んで火と風と水と土の元素霊(エレメンタル)を創り、彼らを統率する王をそれぞれに置いた。  神々は四元素すべてを統合した〈第五元素(クウィンテセンス)〉の王となった。故に神々は〈世界の支配者(アブラクサス)〉と呼ばれるのである。  ……  神々は精霊たちを駆使して世界を整えていった。  世界が広がってゆくと、神々は自分たちの代理として〈第五元素(クウィンテセンス)〉を元に人間を創った。  ところが人間は神々の威光を嵩にきて威張り散らしたため、不快に思った神々は人間から〈第五元素(クウィンテセンス)〉を操る力を奪った。  以来、人間は神々の助けなしには〈第五元素(クウィンテセンス)〉を操ることができなくなり、ほとんどの人間は単なる労働力とされた。  ごく少数の優れた者だけが神秘の力を許されて神官となり、神々の代理人としての地位に留まった。  こうして人間は力なきものとなったが、その代わりに誰よりも早い速度で増え始めた。  放っておいても勝手に増える人間を、神々はあまり重視しなくなった。  容姿や能力の優れた者を連れ去り、逆らう者は容赦なく殺した。  神々にとって人間は虫のごときもので、美しければ愛で、不快であれば叩きつぶすのは当然であった。
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