第9話 こんな不意打ち、あんまりです!

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「わたし、そういうの性に合わないのよ。たぶん生まれてくる家を間違えたのね」 「そんなことないさ。むしろ……」  言葉尻が曖昧に消え、ふいにヒューバートは歓声を上げた。 「ご覧よ、ソニア。今夜の目的地が見えてきた」  窓の外を覗くと、夕闇を背景に城の尖塔が浮かび上がっていた。いつのまにかアステルリーズを囲む城壁の外に出ていたのだ。 「あれ、もしかしてアラス城? ギオール河の曲がり角にある……」 「そうだよ」  得意気にヒューバートは頷いた。 「あそこって今は誰も住んでいないんじゃなかった? 何とか言う新興の男爵が買い取ったけど、住むには不便だって」 「だから人に貸してるのさ。今夜はその人からの招待なんだ。誰なのかはまだ内緒」  くすくすとヒューバートは笑った。目的地が違うと知った時は不安に駆られたが、秘密めかしたことを言われればわくわくしてくる。兄が一緒なのだから心配することはない。  城はどんどん間近に迫ってきた。窓辺で灯が揺らめき、外には篝火が焚かれて宵闇の中に城を浮き上がらせている。堀に掛けられた石橋に差しかかると、窓外を覗きながらヒューバートが脅かすように注意した。     
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