第10話 沼に嵌まったら抜けるのは大変です。

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「失われた文明の研究団体と謳っている。〈世界継承戦争〉で失われた神々の知識や技術を研究しているそうだ。元々は考古学好きの学生が集まって各地に点在する遺跡の探検や発掘をしてたらしいんだが、いつのまにか妙に秘密主義になって、閉鎖的な結社みたいになった。噂によると〈神遺物(ヘレディウム)〉を見つけたとか」 「〈神遺物(ヘレディウム)〉!?」  思わず大声を出してしまい、慌てて口を押さえる。肩ごしに振り向いて確かめると、さいわい音楽や人声にまぎれて聞きとがめた者はいなかった。ソニアは声をひそめた。 「……それ、見つけたら遺跡管理庁に届けなければいけないのよね」 「そして研究所に回される。ものによっては非常に危険な場合もあるらしいから」 「お兄様はそんな大昔の遺跡や〈神遺物(ヘレディウム)〉になんか、特別な興味はなかったはずよ」 「本当に見つけたかどうか怪しいもんだし、おおかた人寄せの宣伝だろう。それだけなら別にどうってことはないんだが、〈世界の魂(アニマ・ムンディ)〉には単なる同好会ではなく政治的秘密結社、それも反政府的な結社だという噂もあってね。もし本当なら、学生が集まって気炎を上げるだけの他愛ないサークルだとしても、ヒューが参加するのは立場上非常にまずい」     
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