第11話 そういう問題ではありません!

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 必死に何かを押さえ付けているような兄の横顔に、心配と不安とがないまぜになって沸き起こる。ナイジェルが最後に呟いた言葉は暗雲となってソニアの心を分厚く包んでいた。 (〈月光騎士団(ルーメン・ルーナエ)〉──。お兄様は本当にそんな危険な組織のメンバーなの……?)  今すぐにでもこの手を振り払って問い質したいが、兄の切羽詰まった様子が異様すぎる。酒を飲みすぎて吐いたのかと思ったが、それにしては酒精(アルコール)の匂いがまったくしない。どこか痛むのか、気分が悪いのだろうか。苦痛を堪えるように歯を食いしばっている。顔色は死人みたいなのに、瞳だけはギラギラと狂気じみた輝きを発していた。 (そうだわ、前にもこんなふうになった……)  エリックを辞めさせた理由を訊いた時も、急に顔色が悪くなってうわごとめいた呟きを繰り返した。今はあの時よりもずっとひどい。  ひょっとして兄は病気なのではないか。考えたくもないが、身体ではなく心の病に冒されているのでは……?  とめどなく沸き起こる不安が頂点に達した頃、ヒューバートはようやく足を止めた。目の前に大きな扉があった。 「……さぁ、ここだよ」  振り向いた兄の顔は笑っていた。それは何という恐ろしい笑顔だったろう。まるで絶望にすすり泣くような、絶えがたい苦痛に呻くような、凄まじすぎてとても正視に耐えないような『笑顔』だった。     
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