第16話 残さず召し上がればお話しします。

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 頷いた少年はそそくさとお辞儀をして出て行った。ソニアは出された料理を黙々と口に運んだ。食べているうちに突然涙が噴き出してくる。 「う……、ふっ……」  堪えきれなくなって、ナイフとフォークを握りしめた。ぱたぱたと涙がテーブルクロスの上に落ちた。  そっと新しいナプキンが差し出される。ソニアはナプキンに顔を埋めてひとしきり泣いた。やっと嗚咽が収まってくると、宙ぶらりんだった気持ちが幾分か落ち着いた。  ソニアはぬれた目許を丁寧に拭い、ゆっくりと食事を再開した。  皿が空になって一息つくと、見計らったようにドアがノックされた。応対したギヴェオンが珈琲ポットやカップの載った盆を運んできてテーブルに置く。  空いた皿を下げると、彼は珈琲とミルクをカップに注いでソニアの前に置いた。  熱い珈琲は新鮮なミルクが加わってちょうどよい飲み加減になっていた。ミルクの割合も文句ない。  働き始めてまだ数日しか経っていないのに、ギヴェオンは衣食住にわたるソニアの好みをしっかり把握しているようだ。  卵料理は最初からほどよく胡椒が効いていたし、急いで用意されたはずの着替えもサイズばかりでなく色合いやデザインまでソニアの趣味に沿ったものだ。     
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