12人が本棚に入れています
本棚に追加
/162ページ
まさか、彼が助けに来ることを兄は知っていた? いや、そうじゃない。最初から仕組まれていたのではないか? ソニアに恩を売って従僕として屋敷に潜り込むために。
(ギヴェオンは……、こいつらの仲間!?)
血の気を失ったソニアの顔を、少年はうっとりと眺めた。
「ああ、いいな。その絶望顔。とっても素敵だよ。ジャムジェムは人間のそういう顔を見るのが大好きなんだ。もっと見せてよ、お嬢様。ジャムジェムにいい顔見せてくれたら、ほんのちょっぴりだけど長生きさせてあげてもいいよ」
ジャムジェムというのは少年の名前だろうか。興奮に瞳をきらめかせると、少年の顔はさらに禍々しく艶めいた。
ドンドンと外からドアが叩かれ、ティムが叫ぶ。
「お嬢様? どうかなさいましたか」
鍵のかかっていなかったドアが返事を待たずに開いた。ジャムジェムの袖口に、きらりと光るものが覗く。
警告を発する暇もなく、少年の両手から細身の刃が放たれた。それはティムの頭上ギリギリを通過した。ティムが大人の体格だったら間違いなく胸か首に突き刺さっていただろう。
ソニアは身体を反転させ、茫然と突っ立っているティムに体当たりする勢いで廊下に飛び出した。
倒れた視界にこちらへ向かって跳躍する少年の姿が映る。反射的にソニアは壁に当たって跳ね返ってきたドアを思いっきりブーツの踵で蹴った。
最初のコメントを投稿しよう!