第2話 信者なら〈光の書〉を暗記するくらい当然です。(1)

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第2話 信者なら〈光の書〉を暗記するくらい当然です。(1)

「……無限の闇の彼方より彼らは現れた。  混沌の海(ケイオス)を越えて、彼らは至った。  彼らはこの世界を発見した最初の神々であった。  神々は荒れ果てた岸辺に上陸した。  大地は黒光りする尖った石塊に覆われていた。  朝になれば燃え上がり、夜になれば凍りついた。  そこは不毛の世界だった。  にも関わらず神々は嘆かなかった。  何もないなら創ればよい。  そして神々は必要なものを創り始めた……」  朗々と響く美声が止んだ。  うっとりと耳を傾けていたフィオナは、声の余韻が消えるのをせつなく追った。  深紅色の天鵞絨(ビロード)めく麗しい声音が中空に溶け込んだ、まさにその刹那。  ぐすー。  静まり返った室内に、なんとも間の抜けた音が響いた。  広い部屋の中央には長方形の大きな机が置かれている。国内有数の職人が丹精込めて作った、精緻なツタと果物が彫り込まれたクルミ材の美しい猫脚机だ。  その机に突っ伏しているフィオナの主、十七歳という妙齢の少女が、明るい栗色の髪を天板いっぱいに広げ、気持ちよさげに寝息をたてている。  ぐごっ。  今度は噎せたようなイビキが響いた。     
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