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「昔シギの世話をしてくれた人。シギが皇帝になったらいなくなっちゃったの。──あっ、そうだ。夢を見たんだ」
目をぱちぱちさせる妃に、シギスムントは夢のことを話した。うまく説明できなくて、もどかしさに苛立ちがつのる。
最初とまどった顔で首を傾げていたオフィーリアの表情が少しずつ毅然としたものに変わるのを、夢の説明でいっぱいいっぱいだったシギスムントは気付かなかった。
「どうすればいいのかな。わかんないや。何としても助けてあげたいのに。だって彼はいつもシギが困ってる時に助けてくれた……」
吐息のような笑い声が聞こえ、うつむいて唇を噛んでいたシギスムントはふと顔を上げた。
オフィーリアは静かに微笑んでいた。その笑みはいつものように優しく美しかったけれど、いつもとは何かが違っていた。
オフィーリアの笑みはどこまでもやわらかくて、雲のように掴みどころなくふわふわしている。今の彼女の笑みは、しなやかな強靱さを秘めて内側から光り輝くようだった。まるで雲間から太陽が覗いたみたいに──。
「答えはもう知っているはずだと、言ってあげるといいわ」
彼女の声もまた若木がしなるように凛と響いた。シギスムントはぽかんと妃を見つめた。
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