From without love~形のない恋~

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「そう?ボーっとしてたから、どうしたのかと思って」 「ごめんね」 (平常心、平常心) 動揺を隠すように何事もない素振りをした。 「ごめんね!待たせて!」 両手を合わせて謝る友姫。 「全然大丈夫!私もさっき来たばかりだから!雨も降りそうだし早く帰ろっ!」 「そうだね」 私達は今にも振り出し雨雲の空の下、くっつきそうなくらいの距離で肩を並べて歩いた。 初めは、人気があった道路も次第に私達2人だけになる。 すると他愛もない話しを急に立ち止まる友姫。 「友姫どうした?」 「ねぇ?美優?」 友姫は、俯いたまま話す。 「うん?」 「見たでしょ?」 「えっ?何を?」 「……」 黙ったまま俯く友姫の姿を見て、理科の実験室の出来事が甦る。 (もしかして、あの事?) 「えっ?何の事?」 ばれないように、嘘をついた。 「嘘……だよね?」 友姫は、俯いたまま徐々に私へと近づく。 「嘘なんて言ってない」 「本当に?」 後退りをしたのち壁まで追い込まれてしまう。 友姫は突然、両手を壁に押し当て綺麗な瞳で私を見つめる。 俗にいう、壁ドン状態。 (どうしよう……正直見たって答えたら友姫が傷つくだろうし…かといって嘘貫き通したら罪悪感が……) 頭の中で試行錯誤していると友姫が答えた。 「キス」 「えっ?」     
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