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 中崎の遺体はサングラスとマスクをしていた。花粉症だったのかな?  胸をナイフで刺されていた。    2030年2月、尼崎市で亡くなった老婆は野原靖子。  2030年4月 小田原で亡くなった老婆は猫田好美。  2030年夏、神戸市の波止場で亡くなったチンピラは内藤圭史。  ケイシではなく、ヨシフミだ。    NYはイニシャル!    2030年秋 福岡市の民家で亡くなったバーの経営者、南原隆史。  んー……彼だけ違うなぁ?  左由利警部は七尾市にやって来た。  戦国時代には能登畠山氏が七尾城を拠点とし、7代目当主畠山義総の代には、七尾城下に壮麗な「畠山文化」が栄え全盛期を迎える。  1577年(天正5年)、上杉謙信の侵攻により畠山氏は滅ぼされ、その後織田信長に仕える前田利家が能登全域を領有した。江戸時代には一部の天領を除き前田氏の加賀藩の一部となった。  警察は七尾市で凶悪犯を一網打尽にする計画を立てた。   『ファルコン』って偽の組織を設立、ネットで『全国の悪い奴ら集まれ!』と罠を仕掛けた。食事やボーナスを支給、畠山セイトを倒せば罪を免除する。  畠山セイトってのは架空の人物だ。  畠山義総の末裔で、阿佐ヶ谷老人ホーム殺人事件の共犯者って設定だ。  それにしても、今日は絶好の殺人日和だ。小春日和で、少しだけ肌寒い。ジャンバーを着て、フードをかぶる。ブタクサ花粉症でクシャミが止まらない。  マスクを持ってきてよかった。  暑くもなくかといってメチャクチャ寒いわけじゃない。動くにも丁度いい、風もないからフードがはだけることもない。5人のガキの父親は俺を散々、いじめた。パンツを脱がされ、痣だらけになるまで殴って来た。母親たちは売春婦だ。ガキたちはニュースじゃ悲劇の中心人物みたく描かれているが、同級生を殴ったり、犬や猫に虐待したりゴミみたいな奴らだった。安達夫婦を殺したのは波田みたくなりたくなかったからだ。有森は豚箱に入ったが、俺が自由になれたのは警察上層部に仲間がいるからだ。散々、痛い目にあったんだ。何をやったって俺は許される。 「おい、オネーサン、畠山って悪魔はどこにいるんだい?」  雑木林に囲まれた廃墟が塒だ。俺は左ってブスに尋ねた。 「すぐ、そこだ」  左はシグ・サヴァーってオートマチック拳銃をホルスターから抜いて、俺に向けた。 「観念しなよ?桐生」  パンッ!
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