灰被りAの行く末

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それぞれ別の飲食店でバイトをして、押し付けられる家事と暴言、暴力に耐えるので精一杯だった。 「20歳になる前に、ここを出よう」 私たちはいつしかそれを合言葉に励まし合い、そしてついに19歳の春、家族には言わずバイトを辞め、予め用意していた僅かな荷物を持って隣県へと逃げたのだ。 一足先にコールセンターで働き出した伶奈は、随分辛そうであった。 「この仕事合わないかも」とメールや電話で毎晩のように愚痴を零していた。 私はというと、興味もなかったパチンコや騒音、空気の悪さに少しずつ慣れていき、皆に倣ってタバコを覚えそれなりに上手くやっていた。 だんだんと仕事の時間帯もずれ始め、伶奈の愚痴に付き合うのも苦痛になっていく。 私は伶奈からのメールを開くのが億劫になり、着信も無視するようになった。 あんなに共に戦って来たつもりだったのに、いつの間に重石に感じていたのだろう。最後に会ったのはいつだったっけ。 伶奈のことを思い出す時間が減っていった。 ――スマートフォンを片手にタバコをふかし、SNSで仕事のやり取りをする。 窓の向こうの湿度と冷気に包まれた夜の街は、まだまだ眠ることはない。 むしろようやく目を覚ました頃だ。日が沈み、人工的な灯りが輝き出せば、この街の“夜明け”がやって来る。     
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