灰被りAの行く末

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「受からなくても他にも応募してあるから大丈夫。伶奈はほら、寮に入る準備しなきゃね」 私が適当に話を切り上げると、伶奈は安心したのか微笑んだ。 新しい生活。 ひと月分の給料を握り締め、長く続いた虐待から私たちは逃げ出して来た。 伶奈は中学生の時に父親が再婚して、継母とその連子である継姉二人に随分嫌がらせを受けていた。 食事を抜く、家事を押し付ける、物を買い与えない。暴言もあったという。 ボロばかり着て、陰気な顔をした伶奈は学校でも苛められていた。 高校で知り合った私たちは、互いの身の上をぽつりぽつりと話すたびに戦友のような固い絆で結ばれていった。 なぜなら私も、伶奈とはよく似た家庭環境だったから。 私の場合は実母による虐待そして不倫の末離婚後、すぐに再婚した継父と実母両者からの嫌がらせであったが。 立場こそ違えど、親の離婚と再婚、虐待、中学でのいじめという状況は全く同じだ。 「昨日、継母が怒ってお皿を床に叩きつけて……」 「中学では登校したら、まず教室の窓からチョークの粉が降ってきて」 「継父が寝ないで勉強しろって」 毎日毎日、時に泣きながら時に怒りに震えながら互いの家の毒を吐き出しあった。 進学を許されるわけでもなく、就職もこれから先のことも何一つ気にかけてはくれない親を持った私と伶奈。     
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