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ぬるくなったコーヒー。味の良し悪しなどどうでも良い。頭に付き纏う気怠さと眠気が居なくなればそれで良い。
スマートフォンの画面と、曇った窓の向こうを交互にチラチラと見ながらさっさとやり取りを終わらせる。
それが私の仕事だから。
伶奈のことを忘れパチンコ店の仕事に打ち込み、同僚と付き合ったり別れたりを一通り経験した私は22歳になっていた。
その頃には実家との縁も殆ど切れ、正社員登用もされ、ある程度不満のない生活を送っていた。
ただ虐待から逃げ出したいという思いでここに来た私は、特に夢も希望もなく、不満さえなければそれが幸せだと思っていたのだ。
「あれ、依子?」
騒々しい店内で声をかけられ振り返ると、そこにはすっかり変わり果てた伶奈の姿があった。
ひと目見てわかるほど不自然な二重まぶた、細い鼻筋。大きなカラーコンタクト、つけまつげと太くて歪なアイライン、つやつやと輝く金髪の巻髪、露出の多い服装。
こんなに変わっているのに、それが伶奈だと一瞬でわかった。
「久しぶりぃ、ここで働いてんの?」
屈託のない笑顔は変わらないが、私の知っている伶奈とは違う顔だ。
「れ、な?久しぶり、どうしたの」
「あはは、今ダァと来ててさぁ」
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