2人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言って長くて派手な装飾の爪を見せ、後ろの方を指差した。手前でパチンコを打つホスト風の派手な男が目に入る。
あれが“ダァ”、つまり玲奈の彼氏だということはすぐに理解した。
「ねぇ、元気だった?アタシ今通りの方のキャバで働いてんの!グレージュって店なんだけど」
やはりコールセンターは辞めたらしい。しかしまさかその後、キャバクラで働いていたとは思わなかった。
大通りの先には全国規模で有名な歓楽街がある。ここに住んでいれば誰もが知っている場所だ。
コールセンターの仕事が決まった日、ファミレスでささやかなお祝いをして嬉しそうに笑っていた玲奈を思い出し、私は苦笑いするしかなかった。
連絡を断った相手にも関わらず、無邪気に再会を喜び「今度遊びに来てよ」と言える玲奈にどんな言葉をかけたらいいのかわからなかった。
そうこうしているうちに席を立った彼氏のもとへ伶奈は向かって行った。
後頭部をガツンと殴られた気持ちだった。
伶奈は変わった。勿論私だって変わった。
ただそれだけなのに、忘れていた実家のことや、いつか吐き出し合った苦悩の日々、震える指で高速バスのチケットを買ったことがまるで洪水のように押し寄せて来た。
胃の中で食べたばかりの弁当がぐるぐると踊っている。
慣れきったはずの騒音が一斉に鼓膜と脳を刺激する。
最初のコメントを投稿しよう!