比谷日和

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 隣の席のその子は、私の親友といって差し支えないほど仲のよかった子だ。  頭はよく、眼鏡が似合う、うなじに大きなホクロがある子だ。きれいな黒髪をいつも肩にかけていた。  決して美人とはいえずとも、ほがらかでなごやかな彼女は、色話もないことはなかった。  ──そんな彼女が登校してきたのは、AM8:15ごろ。  そんな彼女が変わってしまったのが、そんな彼女を変えてしまったのが、AM8:15ごろ。  時計を見ることもはばかられるほど気持ち悪い空気感が教室を満たす。  クスクス耳を這いずる笑いが空気をよどませ、止まらない。  ──彼女はどう過ごしていたろう。あの日の彼女の滞在時間は10分足らず。その間、腐りきったゴミ箱のようなあの部屋で、彼女はなにをしてただろう。  こんな私をどう見ていただろう。  ただ確かなことは、あの閉鎖的な空間に彼女の声が響くことはなかったということだ。  斧田ゆうか  ゆうちゃん……  その後、私が斧田ゆうかさんの声を聞くことはなかった。  彼女の姿を見ることもなかったと思う。
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