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 音楽だけが5で、あと、国語・算数・理科・社会ともに2か、良くても3であった。図画工作や家庭科、体育などはさらに酷く、点数もつけられないと言ったところであった。音楽だけが突出していると言うことも確かに「おかしい」のである。そして通知表には次のような言葉が添えられていた。  「落ち着きがなく、いつも窓の外を見たりしている。」  こんな変な子供だったから雄介は小学校の頃には友達から「宇宙人」と呼ばれていた。    「このボケナスは将来どんな人間になるのだろうか?お兄ちゃんはあんなに勉強も運動もできるのに、この子ときたらピアノぐらいしか能がない。本当に困ったものだ。」  両親ともに悩みの種だった。               *    やがて雄介は小学校の高学年になった。   小学校では、雄介はよくいじめの対象になった。口数が少なく、おとなしい子供というのは得てしていじめの対象になりやすいものだ。  ただ、虐めと言っても、現代のように陰湿なものではなく、せいぜい「からかい」の対象となる程度ではあったが。    この頃から既に雄介は「自分はこの世に生きていてはいけない存在」だと本気で思い始めていた。  よく、わざと道路の真ん中を歩いて登下校し、車の運転者から怒鳴られた。  「轢いてくれたらいいのに。」  そう本気で思っていた。    上級生からの陰湿ないじめも体験していた。  「お前、買い食いしよったやろ。」  と言われてランドセルを引っ張られ、後ろへ倒れるところを見て上級生は笑っていたのである。  しかし、根っから気の弱い雄介は何も言い返すことができなかった。    そんな雄介にとって、救いが訪れた。  宗教である。    朝のラジオ番組で「宗教の時間」や「ルーテルアワー」などと言った宗教番組を聴くのが雄介の最も心の休まる時間であった。  元々雄介は並はずれた記憶力の持ち主であった。それが勉強に生かされるようになったのは中学2年生以降のことである。  雄介は、先ず「般若心経」をわずか三日で記憶し、時々仏壇へ行って唱えるようになった。
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