冷めてしまった紅茶

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冷めてしまった紅茶

 私と彼の距離を表現するのに、一番適切な言葉は、紅茶が冷めない距離。  彼は隣の部屋に住んでいる。  それは偶然だった。  中学卒業までは、一緒の学校に通っていた。  高校になったら、彼のご家族は引っ越してしまった。何か理由が有ったのだろう。  中学卒業の時に彼に告白しようと思っていた。でも、告白ができなかった。  学校で一番可愛いと言われている子に告白されていた。受け入れると思っていた。 「紀子!」 「え?」 「一緒に帰ろう。オヤジとオフクロとお前のご両親は先に帰ると言っていたぞ」 「なんで?」 「ん?なにが?」 「だって、さっき」 「見ていたのか?」 「うん」  ダメ。泣いちゃダメ。 「紀子。俺は明日引っ越しをする」 「うん。聞いている」 「だからな」 「うん」 「あぁもう。俺は、お前が好きだ」 「え?なに?」 「聞こえただろう。もう一度なんて言わない」 「わたしのことがすき?」 「なんも言わない!」 「明、わたしも、好き」 「よかった」  明は、彼は、高校は別々になったけど、会いに来ると約束してくれた。  私も会いに行くと約束をした。明の新しい住所も私にだけ教えると言ってくれた。  交際が始まった。  そして、お互い都会の大学に合格した。     
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