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軽快なエンディングが流れ始めた。
僕はイヤホンを外し、ため息をついた。
ときめきを感じさせる恋愛も、爽快な戦闘バトルも、笑えるギャグもつくり出せる、アニメの世界。
心の中で、今見たアニメの感想を口にする。
この主人公、美少女二人の気持ちも知らずに自分勝手に喋って。いつも思うけど、幼馴染とかいないよ。委員長と幼馴染が主人公を奪い合うのも、現実としてあり得ない。
挙げ句の果てに転校生が出てきて、その子に一目惚れって、罪が大きすぎるよ主人公日下部。そもそも美少女転校生が来るのは、現実では夢のまた夢。
言い出すと愚痴が止まらない。やはりアニメは、男子たちの幻想を少しでも現実化させる、架空の存在に過ぎないのかな。
主人公に嫉妬しか抱けないけれど、続きを見る価値はありそうだ。スマホを見ると、次回『初めての恋』と告知され、画面が止まっていた。第二話を見ようとすると、電車内にアナウンスが流れた。目的の駅までもうすぐだ。まだ時間はあるというのに、急に緊張してきた。
今日、僕は新しい学校に転校する。友達が出来るか心配でしょうがない。
僕はスマホをポケットにしまい、隣の席に置いていた学校指定のバックを肩にかける。つり革を持ち、静かに立ち上がった。
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