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チャイムが鳴り、僕たちの担任が入ってきた。
ぱっとしない、細身の地味な男の先生だ。
級長の起立、礼に続き、おはようございますと、挨拶をした。
「えーっと、まだこのクラスになって一週間しか経ってないが、みんなで協力してしっかりとしたクラスにしていきましょう」
先生はネクタイを動かした。
「あと、今日は数学の西中先生が休みになるので、その時間は自習になります。時間割りはあそこの黒板に貼っとくんで見といて下さい……」
自習と言われた瞬間、教室の空気が変わり、みんなが騒ぎ出した。動物園状態の中、一人立ち上がった者がいた。
椅子の床を擦る音がすれば、皆の視線がその者に注がれる。
「どうした、委員長?」
先生が不思議そうに訊ねた。
「先生、思ったのですが、私少し目が悪いのであそこの席に移ってもいいですか」
委員長が指差した場所は、僕の隣の席だった。
当然、僕の横にはきちんと千里が座っているのだが。
「でも、だったら前の席がいいんじゃないか?」
先生の言うとおりである。ごもっとも。
「前に行くと、逆に黒板が見えにくくなるし、前は左右の文字が見えにくいんです」
委員長って屁理屈が凄いな。
「じゃーまぁいいんじゃないか」
先生は顎をさすりながら、千里に代わるよう指示した。
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