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だが、千里は動こうとしない。
「先生、おかしいですよ。いちゃつきたいだけの猫を被った人に譲るなんてうちはできません!」
千里は立ち上がり、先生に抗議した。
思いもしなかった千里の反論のせいか、先生はうろたえるばかり。目が二人の間を交互に往き来していた。
少数の男子は、予想外の展開と先生の戸惑いの様子に失笑している。二人だけでこのコントを続けるのは構わない。けれど、会話の対象がこの僕に移りそうだと思うのは、さすがに神経過敏か。
「違います! 私は、その、 日下部くんと仲良くなりたいとか……そんなやましいことは一つも考えてません! 千里さん、あなたのほうこそ、どうなんですか」
ここで僕の名前出さなくても……。
委員長は躍起になって、千里に反撃を開始した。
「え、どうって……何が?」
千里は顔をひきつらせた。
「日下部くんのことをどう思っているんですか」
委員長は千里をまっすぐに見定めて言った。公衆の面前でなにやっているんだ。ほら、先生も困ってるぞ。
「別になんだっていいじゃない! あんたに言う必要はないわ、うちらの関係なんて……」
ちらと僕を見たあと、千里はうつむいた。クラスのアホたちがひゅーひゅーと叫びだす。クラスもざわざわしだした。
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