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でも女子か。これ以上増えてもただうるさくなるだけだし。とひどいことを考えていると、先生が皆を静めるようにパンと手を叩いた。
「入ってきていいですよ、東雲さん」
ドアがレールの上を滑る音がした。
ちょっと小柄な、銀髪のロング美少女が、そこに立っていた。東雲さんは、音をたてずに先生の隣まで歩いてきた。
彼女は僕たちに背を向け、視線を動かす。いいのが見つからなかったのか、折れたチョークを片手に、黒板にまとまった字で東雲 玲と書いた。
「自己紹介をよろしく」
先生に言われると、東雲さんはゆっくりと喋った。
「東雲 玲です。皆さん、これからよろしくお願いします」
お辞儀も軽やかでゆっくりだった。
人形みたいな顔立ちに、清い声。
瞬間に、僕はいままで感じたことのないような、胸が高まる衝動に駆られた。抑えられない、激しい動悸が耳から聞こえてきた。一目彼女を見るだけで、僕の胸が疼く。
やっと、僕は胸が疼く原因を認識した。
僕は彼女、東雲 玲に一目惚れしたのだ。
こうも思った。是非、僕の隣の席へ。
恥ずかしいことは承知している。僕は積極的に喋る人間ではない。しかし、彼女を求める気持ちは、僕の性格をも吹き飛ばした。千里には悪いが、変わってもらおう。
僕は席を立つ。波打つ鼓動が止まらない。
そして、東雲さんをどこに座らせようか迷っている先生に告げた。
「し、東雲さんを、僕の隣の席へ座らせて欲しいです!」
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