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スマホ
僕は少しオタクな冴えない中学生。勉強の成績はあまり良くなく、運動神経も平均の少し下といったところだろう。これから新しい学校生活が始まる。だがしかし、僕は成績にとらわれない男だ。
電車内であろうと、スマホを取り出し耳にイヤホンを付けた。
駅から出てもイヤホンで音楽を聴いていた。少し歩くと、後ろから誰かが駆けてくる足音が微かに聞こえてきた。だんだんと音が大きくなって、こちらに近づいてくるのが分かる。
何か先生との約束事でもすっぽかしたのかな、と適当に考えて気にせず歩いていると、急に足音が僕の真後ろで止んだ。誰だ。
思わず後ろを振り替えると、クラスの風紀委員長がそこにいた。青い澄んだ瞳で、僕を睨んでいる。黒髪が腰まで届いていた。僕、何かやらかした?
「ど、どうしました、委員長?」
しかし、努めて平静に訊ねた。
「どうしたじゃないわよ、日下部くん。学校の登校中に音楽聴くのは校則違反なの、分かってる?」
委員長の青い瞳が、僕を凝視する。でも、音楽は適度に聴きたくなるもの。
「けど委員長、先輩とかはスマホ普通に使ってますよ」
僕は辺りを見渡し、先輩を探した。
「ほら、あの先輩なんかはスマホ弄ってますよ」
ちょうど駅から出てきた、ながらスマホの先輩を指差した。委員長は先輩を見て、苦い顔を浮かべる。
「そ、それは……上級生なら少しはいいのよ。でも、同じクラスになった生徒が違反しているのを、風紀委員長として見過ごすわけにはいかないわ」
理不尽すぎる。が、これが風紀委員長の仕事なんだろう。2年生ながら風紀委員長であり、仕事を全うするのは凄いことだ。僕とは雲泥の差とでも言うべきか。
「分かった、わかった。外せばいいんでしょ」
仕事に勤しむ委員長の勇姿に免じて、僕は不満ながらもイヤホンを外した。
「そんな顔しなくてもいいじゃない」
しょんぼりした感じで委員長は言った。顔に出ていたか。
すると、はぁと委員長は吐息をもらした。目を閉じている。何か悩んでいるようだ。
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